働くひとのための心理学のブログ

もっと楽しく働くために、ビジネスに関わる「心と行動」を考えます

職場で心の不調を感じたら「EAP」の3文字を思い出すべき理由

「楽な仕事などない。会社がお前に給料を払うのは仕事がしんどいからだ」

と、新人のころに先輩に言われたことがあるのですが、景気や市場環境などによって会社の売上や利益がいとも簡単に増減したり、給料や賞与の額が職種や会社によって千差万別である現実などを見てきたいま、個人のしんどい思いの度合いと人件費原資との相関ってほとんどないような気がしています。

なので、給料の多い少ないはいったん横に置くとしても、仕事が仕事である以上は何らかの「しんどさ=困難さ」を伴うことはある程度避けられないのかなとは思います。理不尽な顧客や無茶な上司、気のきかない部下、やってもやっても終わらない作業...職場にはストレス要因がたくさんあります。そのひとつひとつは仕事をこなしながら直属の上司や、場合によっては人事部などの社内第三者と相談しながら解決したり負荷を減らしたりしつつ解決すべきなのでしょうが、もし心の不調に発展しそう(あるいは不調を覚え、まだ誰にも相談てきていない)としたら、会社に「EAP」の制度があるかどうか調べ、その利用を検討するのが良いと思います。

EAP(Emproyee Assistance Program):従業員支援プログラム

EAP(イーエーピーともイープとも)は従業員支援プログラムと訳される社員向けサービスの一種で、導入企業や委託先機関の体制にもよりますが、産業カウンセラー臨床心理士などの心理職とカウンセリングルームや電話などで相談できる(社員の個別負担はなし。月間で一定回数まで、と上限が設けてある場合も)というメニューがたいていメインに位置づけられています。直接の利害が絡む上司や、一義的には会社を守ることを本筋に抱える人事部員との相談に抵抗を感じたら、外部にあって直接の関係がなく、クライエントと並走して問題の解決を見出そうとする心理職との対話が心の不調を和らげる一助となるかも知れません。

そうして大切な社員の精神的健康と会社の生産性を維持することが、費用をかけてEAPを自社に導入する動機なのです。職場の要となる社員が突然(と感じることが多い)に診断書を提出して休んだり、ストレスを理由に退職を申し出て「事前に何とか対処できなかったのか」と悔やむ例がいまだにたくさんあります。労使双方からもっと活用されて欲しい制度のひとつです。